本格版の日常の動作への気づきはレベル1と2になっています。このステップではレベル1のやり方を学び取組みます。
【動画による講義】
【文字による講義】
本場ではとても大事な取組み
日常の動作への気づきは、ヴィパッサナー瞑想の本場での修行ではとても重視されます。
ブッダが生存中、弟子のアーナンダは一度聞いたことはそのまま記憶する記憶力を持っていて、常にブッダの隣りにいてブッダの言葉を記憶する役目をしていました。
ブッダが亡くなり、阿羅漢(あらかん)という最高の悟りの境地に達した弟子が集まってブッダの教えを確認する会合=結集(けつじゅう)が開かれることになりました。
それぞれが自分はこう聞いたと発表したとき、それが正しいと認証できるのはブッダのまじかに常にいて記憶していたアーナンダだけです。でもアーナンダは阿羅漢まで達していなかったので、そのままでは参加できませんでした。
アーナンダは阿羅漢に達するため、目覚めてから眠りにつくまで日常の動作の気づきを欠かさず一所懸命に取組み続けました。そして結集の開かれる前の晩、眠りにつこうと気づきをしながら体を横たえはじめたその瞬間、最後の段階の覚りが起き阿羅漢に達しました。
こういう伝説もあって、本場の修行では気づいていないとき修行者は死んでいるのと同じとも言われて、一日中、目が覚めた時から眠りにつくまで、ゆっくりゆっくりと動作して注意を向け続け、動作とそれに関わる心に気づきラベリングし続けます。
やり方
修行ではない一般の暮らしでは、一日中、気づき続けることは無理ですので、できる機会にできるだけ取組むようにしましょう。1回に数分でもかまいません。
日常生活の中の動作をゆっくりゆっくりとして、心の中で動かしている体と動作に意識を向け細かく細かく気づきながらします。そしてラベリングもするようにします。
例 カップを持ち引寄せる
例えば、テーブルの上のカップを持って自分に引き寄せるとします。
普通は意識せず手を伸ばしカップを持ち引き寄せますが、ゆっくりゆっくりと例えば次のように気づきとラベリングをしながらします。
カップを用意して目の前に置いてやってみましょう。

なお、気づきの細かさ・多さは気づきの力により異なります。ですから次は一例になります。
気づきの力が高くなってきるにつれて、気づきの間隔は細かく細かくなり、ラベリングもぴたりと合うようになってきます。
- カップを見ていることを気づき「見ている、見ている…」とラベリングします。カップの詳細を見ようとするのではなく、カップを見ている自分の意識に気づくようにしてラベリングします。
- そして、動作する瞬間瞬間の手と腕、動作にしっかり気づくようにして、ラベリングもして動作を進めていきます。
- カップに手を伸ばすとき、手を伸ばしはじめた瞬間に気づき「伸ばしている」とラベリング、伸ばしている瞬間瞬間に気づき「伸ばしている、伸ばしている…」とラベリングして、伸ばしていきます。
- 手がカップの取っ手に触れたら触れていると気づき「触れている」とラベリング、手が取っ手に触れていく、取っ手を握っていく瞬間瞬間に気づき「触れている、触れている…」「握っている、握っている…」とラベリングします。
- 手が取っ手を持ちきったら、手が取っ手を持っている瞬間瞬間に気づき「持っている、持っている…」とラベリングします。
- カップを持ち上げる動作を、カップを持ち上げはじめた瞬間に気づき「持ち上げている」とラベリング、持ち上げている瞬間瞬間に気づき「持ち上げている、持ち上げている…」とラベリングして、していきます。
- カップを引き寄せる動作を、カップに引寄せはじめた瞬間に気づき「引寄せている」とラベリング、引き寄せている瞬間瞬間に気づき「引寄せている、引寄せている…」とラベリングして、していきます。
日常の動作への気づきでは意図的にしっかり見ようとか、しっかり感覚を感じようということはしないようにします。
例えば、カップが冷たい、軽い・重いなどの感覚が現れたら、現れた瞬間に気づき「冷たい」「感じている」等と3回ラベリングして、動作への気づき・ラベリングに戻ります。
している動作に関わる以外の心身の現象、思考や記憶や想像、感情や感覚、心の状態が現れても、そちらへの気づきは坐る瞑想のように入念にはしません。
動作に関わること以外に心がさまよったときは、さまよったとだけ気づき、動作への気づき・ラベリングを続けます。
気づきの力が高くなってくると従来とは異なる感覚になるときがきます。例えば上記の例の場合、カップを持つために力がほとんどいらないようになったり、カップや手の重さがとても軽く感じる、ないように感じる場合があります。