カシナ瞑想は、初期仏教(上座部仏教)に伝わる集中瞑想(サマタ瞑想)の一種で、心を一点に集中させ、深い安定(定)を得るための技法です。
パーリ語の「kasiṇa(カシナ)」は「全体」「完全な対象」といった意味があり、視覚的な対象を用いて心を一点に集中させるのが特徴です。
カシナ瞑想の基本的な考え方
心を一つの対象にしっかり集中させることで、五蓋(ごがい)(欲・怒り・眠気・落ち着きのなさ・疑い)を乗り越え、初禅から四禅へと進むことを目指します。
カシナは「外部の視覚的対象を使って、心を穏やかに統一していく」方法です。
10種類のカシナ瞑想の対象(伝統的分類)
- 地カシナ(赤土や粘土など)
- 水カシナ
- 火カシナ
- 風カシナ
- 青カシナ
- 黄カシナ
- 赤カシナ
- 白カシナ
- 空カシナ(空間の無限性)
- 光カシナ(明るさや光の円)
カシナ瞑想の実践ステップ(例:地カシナ)
- 対象の準備
例えば赤土を直径30cmほどの円形にして平らに整え、明るい場所に置く。 - 凝視する
対象のカシナを視覚的に見つめながら集中。目を閉じたときにもそのイメージが心に浮かぶようになるまで続ける。 - 心象(ニミッタ)の出現
対象を見ているうちに、心に「心象(パーリ語:ニミッタ)」が現れます。これを「初期ニミッタ(粗いイメージ)」から「発展ニミッタ(精妙なイメージ)」へと進める。 - 内観に移る
物理的対象を見ることをやめて、心に浮かぶニミッタに集中を続ける。 - 禅定に入る
発展ニミッタに完全に心が安定すると、初禅、二禅…と段階的に深い定に入っていく。
カシナ瞑想の目的と効果
- 深い集中力(定力)の育成
- 五蓋を超え、心の清らかさを体験
- 慈悲の瞑想や智慧の瞑想(ヴィパッサナー)の基盤づくり
- 四禅を得るための有力な手段
補足:現代では…
現代の一般的な瞑想ではあまり使われませんが、上座部仏教の伝統修行道場(ミャンマーやスリランカ、タイ)では今も修行者に用いられることがあります。