【動画による講義】
【文字による講義】
この講義「坐禅の方法1」は坐禅の瞑想状態の呼吸のしかた・心の持ちかたです。
次のページの講義2は、全体の取組みかたで、その中で瞑想状態に入ったらこの坐禅の方法1の講義のしかたを用いるようにします。
坐禅をするときは、次のような呼吸のしかた、心の持ちかたをします。
呼吸のしかた
鼻呼吸で腹式呼吸をします。2で説明しているように姿勢を整えて、そして、呼吸を整えていく。
自分の内側に意識を向けて、一息一息の呼吸のごとのその出入りと出入りによる自分に静かに静かに注意を向けて、ゆっくり静かに呼吸をしていくことに注力してリラックス、集中を深めていきます。
坐禅・瞑想をしていると思考や感覚が現れてきます。現れてきたら、思考や感覚に巻き込まれていたら、呼吸への注力に戻ります。そうして思考の現れを少なく、無くしていきます。
リラックス、集中を助ける方法
次のような方法を用いて呼吸を整えリラックスを深め思考を離れ集中する助けにします。
曹洞宗開祖の道元禅師は使わないと説いていましたが、試して最もしやすく効果的な方法を使うとよいです。なお使わなくても十分にリラックス、集中できるようになれたら使わなくてもかまいません。
数息観(1)
「すうそくかん」ではなく「すそくかん」と読みます。息をするときに声には出さずに数を数えます。次のような様々なやりかたがあります。
- 1(イーチ)と吐き、1(イーチ)と吸う、2(ニー)と吐き、2(ニー)と吸うと数を順に数えていき、1~8までを繰り返し数える
- 吐くときに数を1つずつ数えて、吸うときは数えないで、1~8までを繰り返し数える
- 吐くときは数えないで、吸うときに数を1つずつ数えて、1~8までを繰り返し数える
数息観(2)
- 一呼吸ごとに、吐くときに1~4まで数え、吸うときに1~4まで数える。それを繰り返す
なお、例えば吐くときに1~5、吸うときに1~4と、吐くときの方を吸うときよりも数を多くすると、吐く息の方が長くなり、リラックス、集中が高まりやすいことがあります。
数息観(3)
なかなか坐り続けられない、時間が気になってしまうなどの場合は、一般の数息観を応用し、次のいずれかにして、一呼吸につき数を1つ数えて1、2、3、4、5…と数をずっと増やしていきます。そして例えば「今から50数えるだけ必ず瞑想しよう」等と決めて取組むようにします。
- 息を吐くときに数を数えて、吸うときは数えない
- 息を吸うときに数を数えて、吐くときは数えない
そのほかの方法
息に注意をむけて、心で息を観ながら、次のいずれかのように言葉を心の中で唱えながら、ゆっくりと呼吸します。
- 息を吐くときは「吐いている、吐いている…」、吸うときは「吸っている、吸っている…」と唱えて
- 息を吐くときは「出る、出る、出る…」、吸うときは「入る、入る…」と唱えて
- 吐くときは「無ー」と唱えて、吸うときは自然に任せる
- 吸うときは「プッー」、吐くときは「トー」と唱えて。「プットー」はブッダのことです。
呼吸の種類‐良い呼吸とは
坐禅や瞑想中の呼吸の状態には次の4種類、風(ふう)、喘(せん)気(き)、息(そく)があります。息(そく)が調っている呼吸で息の呼吸になるように取組んでいきます。
- 風(ふう):鼻の中の息の出入りの音がある呼吸
- 喘(せん):音はしないが息の出入りのリズムに乱れがあり、あらくてなめらかでない呼吸
- 気(き):音はしない、リズムも乱れていないが、あらくてなめらかでない呼吸
- 息(そく):音もなくリズムの乱れもなく、なめらかで、息をしているのかわからないようになり、心が安穏に深く静まってくる呼吸
心の持ちかた
坐禅・瞑想をしていると思考や感覚が現れてきます。現れてきても、また思考や感覚に巻き込まれたら、呼吸に注力します。そうして思考の現れを少なく、無くしていきます。
心は、坐禅の方法【2】で学ぶ姿勢で坐ったら、通常はヘソの下の丹田の前あたり、法界定印をしている場合は両手の丸くなった中に置く感じにします。そして体の中心がそこにあるように呼吸をします。
そうすると、腹式呼吸にもなりやすく、呼吸を続けているうちに体がリラックスして安定もしてくるようになります。
なお、気持ちが沈む場合は眉間や頭のてっぺんに置いたり、集中できず気が散る場合は鼻の先に置いたり、動揺したり浮わついているような場合は足の上に置くというやりかたもあります。
集中しようとはしない
坐禅や集中の瞑想のサマタ瞑想をするときに「集中しよう、集中しよう」「集中しないといけない」と取組んでしまう人がいますが、集中はあくまでも結果です。
やりかたにそって取組んで、リラックスを深めていき思考から離れていくことで、結果として集中状態になります。
集中よりまずリラックスを
瞑想は集中するもの、坐禅は特にそういうものと思っている人が少なくありませんが、従来の心身の緊張、束縛から離れることが第一に重要です。
ですから「集中するのだ」ととらわれないようにして、心身がリラックスしていくことを第一に大切にします。心身がリラックス状態になり、緊張、束縛から離れると集中もできるようになります。
無・無心になろうとしない
無・無心になろうと思うことは、坐禅に限らず今後の瞑想でもしないようしましょう。「そうなろう」と目指す意識を持ちながらの坐禅・瞑想は、その意識が集中や無心状態になるのをさまたげます。
坐禅・瞑想をすれば思考や記憶や想像が浮かんでくるものです。浮かんできても、それを進めたり広げたりしないようにして、かかわることなく静かに呼吸をしていることに静かに注力し続けます。集中や無心のような状態は、その結果としてなるものです。
また、このステップ2で坐禅に取組むのは、瞑想の基本的なしかたを覚えることと、深い集中状態になることが目標ではなくて、心身がリラックスする状態になることが目標です。深い集中状態になることは、次のステップ3のアーナパーナによってできるようになりましょう。