ステップ5

大事な日常での「気づき」の取組み

瞑想は瞑想のためにするのではなくて、瞑想したことで得られる力らや変化によって、日常の自分のあり方に活かされて意味があります。

そして、坐る瞑想や歩く瞑想と同等に、ミャンマーなど本場の修行でも、日常の生活の中で、自分の動作や感覚に気づき続ける取組みが重視されます。

日常の中で「気づき」の練習に取組むことは、メタ認知力=自分への客観的な気づきの力・習性がいっそうついてきますし、瞑想に取組む本質として重要です。

日常で「自分」に気づくように

日常生活で、自分の心・頭に記憶・思考・想像・感情が現れたり、体に感覚が現れたら、現れたと即座に気づくように心がけてします。

自分の記憶・思考・想像・感情、体の感覚の現れに客観的にすぐ即座に気づく自分ができてくるように目指します。

お釈迦様の遺言「マインドフルネス」

もともと「マインドフルネス」は、仏教の「正念(しょうねん)』のことがそう英訳されたのですが、正念はお釈迦様が亡くなるときに弟子たちに言った重要なことです。

お釈迦様は弟子たちに、「いつも正念=マインドフルネスでいられるようになりなさい」、「そうすれば、苦しみから解放されて、福楽に暮らせるようになる」と言われたのです。

さてどうして、「いつも正念=マインドフルネスでいられるようになる」とそうなれるのか?

マインドフルネスは「気づき」の力

マインドフルネスと英訳された正念は、「自分の心と体の瞬間瞬間に客観的に気づき自覚する」ことなのです。そういう気づきの力と習性のこと。

どのような気づき方をするかというと、「自分の心と体に現れた現象、反応や思考や感情、感覚、動きを、評価せず、静かにありのままに気づく気づき方」をします。

一般に人は、いつも自分の「外」に気づき暮らしていますが、徹底的に「自分」に気づきます。

本来のマインドフルネスの場合には、それが当たり前の習性になるやり方の瞑想に取組んで、それを習性になっている力にします。

気づきの力のマインドフルネスで得られること

3点あります。

1.反応、思考、感情、動きのままにならずに済む

それらが現れたときにすぐ「気づき」が入るので、それらが続くことに間ができるようになり、それがそれらにそのままにならずに済む自分にしてくれます。

2.あり方・言動を選ぶ機会ができる

どんな反応、思考、感情、動きが現れているか気づいているうえに、そのままにならずに済んで、違うあり方・言動を選ぶことが可能になります。

3.根っこの癒し、変化が起きる

本来のマインドフルネス瞑想の取組みの場合には、上記の1と2が普段、いつも普通にしていて当たり前な自分になります。

さらに「気づき」の力がとても素早く強くなって、脳の回路を変えることが強く起きるようになり、反応、思考、感情の現れ自体が変わってくるようになります。

本来のマインドフルネスの仏教ではこれを心の清浄とも言います。私の場合は、たとえば、怒りの感情自体がまったく現れない人になり、代わりに平静で慈愛が現れるようになりました。

本来の「マインドフルネス」は「心の主人」になる

こうして、本来のマインドフルネスは、「自分、自分の心=マインド」について、「いつでも=フルネスに」気づき、奴隷ではなく、主人でいるようになれるものです。

気づきの力・習性を日常で育てる方法

ただ「気づくだけ」をトレーニングのようにする

簡単です。日常生活の中でいつでもどこでも、すぐ簡単にできます。

ここまでの講義では、現れた自我状態に気づくという実践を練習してきましたが、「自分への気づきの力」を養うために次のようしてみましょう。

  • 日常生活の中で「やってみよう」と思ってします。何をしているときでもかまいません。
  • やってみようと思った時間の間、意識を自分に軽く向けていて、自分の体の一つ一つの動きや、思考や感情、感覚に、意識的に細かく気づき続けるようにします。
  • 心の中で、気づきを言葉にしても良いです。

【 たとえば 】

家で何となく過ごしているとき「やってみよう」とはじめます。たとえば

  1. テレビを見ている → 見ていると気づく
  2. 水を飲みたいと思う → 思ったと気づく
  3. 目をずらした → ずらしたと気づく
  4. テーブルの上のコップを見た → 見たと気づく
  5. コップを持とうと思う → そう思ったと気づく
  6. 手を伸ばそうと思う → そう思ったと気づく
  7. 手を伸ばす → 伸ばした、伸ばしていると気づく
  8. コップを持った → 持ったと気づく
    ……と、続けます。

できるだけ細かく細かく気づくようにします。

どんなときでも、どんなことでもできますから、なるべくたくさんの機会にトレーニングしましょう。

1度の時間は短い時間でよいので、回数を多くするとよいです。

目 標

このワークを繰り返していって
日常で、ふと自然に、自分の動きや思考、感情などの現れを気づくようになっているとよいです。

それは始めはなんとなくかもしれませんが
それでも、意識を向ける方向は、自分の外へから自分へに、変わっていっています。