この講義で、八正道について学んで、ステップ2から八正道の取組みをはじめましょう。
前ページの講義で学んだように、八正道の文脈で取組んでいくのが、マインドフルネスの正しい取組み方です。
八正道は、苦しむことなく安楽に生きられる人になるための清浄行、自己浄化の道として、次の8つの徳目がセットになっています。各項目の向上が他の項目の向上を助け全体が向上します。

八正道の取組み方・取組み手順
8つは「戒・定・慧(かいじょうえ)」の三学という3分類になっていてます。
- 「戒」の項目:正語、正業、正命
- 「定」の項目:正精進、正念、正定
- 「慧」の項目:正見、正思惟
取組みの手順
正式には次の通りです。
- 全体の目標になる「慧」はどんなことか「知識」として知ります。この講座の場合は、この次のステップ2aの講義でまず学べばOKです。
- 次に、八正道全体、「定」の支え・土台となるので「戒」を日常でスタートします。どうしたらよいか、この次のステップ2bで学べて、はじめられます。
- 次に「定」の瞑想の取組みを始めます。ステップ2bで始められます。
そして、「戒」「定」の取組みを続けていくことで、「慧」の項目が「知識」から「智慧」に変わるときが来るという手順になっています。
八正道の各項目
8つの項目のそれぞれについて説明します。
■ 戒の項目
正語、正業、正命の3項目で、日常の自分の在り方を清浄にします。戒清浄と言います。
そうして、道徳的に清浄になれば、心も安定し透明になってきて、定の項目の瞑想、正しい努力を進める土台となり、慧の項目の得心に導かれることも可能になってきます。
具体的にどのようにしたらよいかは、ステップ2bで学べます。
正語(しょうご)
生きとし生けるものの、他者の安楽、幸せにつながることを、つながるような言葉づかい、言い回しで話すことです。そして、特に次はしないようにします。
- 不妄語=嘘、偽りを言わない。みだりに飾ってでまかせを言わない。
- 不綺語=無意味・無駄なおしゃべりをしない。
- 不悪口=乱暴・粗野な言葉づかいはしない。
- 不両舌=人を仲違いさせるようなことを言わない。
正業(しょうごう)
この「業」は行いのことで、正しい行いをすることです。特に次はしないようにします。
- 不殺生:自分に対しても含めて、故意に生き物を殺さない、傷つけない。
- 不偸盗:人のものを盗まない。与えられていないものを自分のものとしない。
- 不邪淫:よこしまな愛欲を持たない。不道徳、よこしまな性的関係は持たない。
正命(しょうみょう)
生活を立てるために他者、生きとし生けるものの害につながるような仕事はせず職業にはつかずに、正しい生業によって暮らすことです。
必要以上のものを自己所有としないという意味合いもあります。
■ 定の項目
正精進、正念、正定の3項目です。次のことに注力して取組んで、自己変容を起こしていきます。
正精進(しょうしょうじん)
次の四種類の正しい努力(四正勤)を心を励まし努めることです。
- まだ生じない(していない)悪を生じない(しない)ように努める。
- すでに生じた(してしまった)悪は断(しないよう)に努める。
- まだ生じない(していない)善を生起(するよう)に努める。
- すでに生じた(した)善を維持(していくこと)に努める。
正念(しょうねん)
正しい気づき、正しい(浄化済みの)記憶のこと。「マインドフルネス」と英訳されたことです。
常に今この瞬間この瞬間の自分をありのまま正しく気づいている状態です。「慧」の項目のために特に重要なことで実践の中心的位置づけとされます。
そして、その修練のために気づきの瞑想・ヴィパッサナー瞑想に取組みます。ステップ4からていねいにやり方を学べて取組めます。
正定(しょうじょう)
ステップ2bで「禅定」について学びますが、深い集中状態の禅定状態になることです。一般の生活者としては正しく心が安定する、集中する状態の実現と考えると良いです。
そして、その修練のために集中の瞑想・サマタ瞑想に取組みます。ステップ3でていねいにやり方を学べて取組めるようになれます。
■ 慧の項目
正見、正思惟の2項目です。
このような見解・見識、思考、考え方を持つようにして、戒の項目の取組みを土台に、定の項目の瞑想、努力をしていくと、それが智慧・悟りとして得られることになります。
正見(しょうけん)
物事の道理の正しい見識・見解を持っていることです。ステップ2aで知識としてまず学べます。
そして、正見は、八正道全体の実践が進むと、悟りのレベルの「正智」になります。八正道は、正見が正智となることを全体として実現していきます。
正思惟(しょうしゆい)
正しい思考、考え方を持っていることです。次の3種類があります。
- 世俗的な快楽・欲から離れる、過剰な欲を持たない
- 他者、生きもの、自然を害さない、苦しめない、排除する攻撃的な心を持たない、生きとし生けるものを苦しみから救おうという悲の心、生きとし生けるものの幸せを願う慈の心を持つ
- 自分の心に逆らうもの、厳密に言うと不快に思うことも含み、そういうものを憎み怒る心を持たない、様々な悪い面から見ない