近年の西洋系のマインドフルネス瞑想は、インターネットや一般の本などではプラス面が目につきます。でも、実はマイナスの研究報告、注意喚起があります。
そのことにもふれながら、瞑想の適切な取組み方・文脈についてお話しします。文脈とは目的や瞑想と瞑想以外のことも含めてどのように取組みを進めていくかということです。
近年のマインドフルネス瞑想のマイナス情報
例えば、コベントリー大学のファリアス准教授らのチームは次のような報告を発表しています。(NewScientist 2020年8月14日より引用)
様々な医学雑誌から関連する55の研究を調査し分析の結果、瞑想をした人の約8%には好ましくない影響があったことを発見。
瞑想によって、むしろ日々の生活の不安の増大や、中にはパニック発作まで発症する人もいた。中には精神的な異常や死にたいという感情を抱いた人までいた。
近年の西洋系のマインドフルネス瞑想は、実は、これほどリスク・危険性もあるものになっています。
また、近年のマインドフルネス瞑想は、人への共感力や寛大さ、気配り・優しさが深まると言われてはいますが…、
ニューヨーク州立大学バッファロー校のプーリン心理学部准教授は、次のような研究結果を発表しています。(ニューズウィーク日本版2021年8月19日より引用)
マインドフルネスは実践者をより良い人間に、より寛大で親切な人間にすると多くの人が考えているが、より利己的になる人もいる。
比較的相互依存的な被験者でマインドフルネス瞑想をした人は、17%がより寛大になった。一方、比較的個人主義的な被験者で、マインドフルネス瞑想をした人は他人のために時間を費やすことに15%がより消極的になった。
トロント大学研究員のラクシュミ・マゴン氏の報告には次のようにあります(ニューズウィーク日本版2020年4月24日より引用)。
マインドフルネスは、自らの置かれた状況について見方を変えるよう教える。でも状況そのものが変わらなければ、マインドフルネスを実践しても効果は限られている。
苦しみの根本原因が解決されない限り、いくらマインドフルネスを精力的に実践しても、抑鬱や不安にさいなまれるリスクが残る。
どうするのが適切な取組み方・文脈か
マイナスの研究報告、注意喚起や取組まれている状況などから、次のことが言えます。
危険性が小さく効果のしっかりある瞑想の方法に取組む
効果のない・少ない方法の瞑想の方法をどんなにしても、効果は得られないかたいして得られません。このWeb講座のように、しっかりと効果のある瞑想の方法に取組むことが重要です。
また、瞑想の方法によってリスクや危険性も違います。不安や心の状態がとても悪くなっている人がいるという上記のファリアス准教授の報告には、次のようにも書かれていました。(NewScientist 2020年8月14日より引用)
心をコントロールしようとする試みに対して、むしろ一種の反抗が自分の中で発生し、不安や鬱の増大に繋がっている。
近年の西洋系のマインドフルネス瞑想は、特定の目的の効果を求めて意図的にやり方をつくり、意図的に心をコントロールするやり方・取組み方になっている傾向があります。
一方、この講座の本来のマインドフルネスの瞑想は、特定の目的ではなく、全人格的な変化・改善が目的なので、特定の意図で心のコントロールはあえてしないやり方です。
きちんと瞑想の段階をふんで力をつける
どんなスポーツでも習い事でも、基礎から始めて初級、中級、上級と段階的に進むことで安全に効果も高く得られるようになります。
しかし、そういうステップをふむ指導・習得があまりされていません。本来のマインドフルネスの瞑想でもそうしない教え方がされていることが少なくありません。
瞑想の力は特にステップをふまないとつきませんし、安全に高い効果は得られません。
この講座のように、瞑想を始める前に呼吸の練習をして、瞑想は初歩的なものから、しだいに高度な方法をしだいに力をつけながら取組むのが安全と効果を得るためには望ましいことです。
リスク管理をきちんとする
瞑想には心理的・精神的なリスクがあります。ですから、瞑想の取組みにはリスク管理が重要ですが、近年のマインドフルネス瞑想でも本来のマインドフルネスの瞑想でもそれがされていないケースがほとんどです。
この講座のように、瞑想に取組む前、ステップ2であらかじめリスクや危険性、その対処について教えて、きちんと個人別にサポートをしていくことが本来は当然です。
個人ごとに進めて、個人別のサポートもある指導
瞑想を習得するとき、取組みの頻度や量、習得度、取組んで現れること・リスク、効果の進みは一人一人違います。ですから、瞑想の習得は個人ごとのペースで進められて、個人ごとの継続的なサポートのある指導が必要です。
しかし、多くの場合、学校の授業のように他の人と一緒に複数の人が一緒に進む集合型の学習指導がされ、継続的な個人別のサポートがされていることもあまりありません。
私の修行したミャンマーの僧院では、一人一人の指導と取組みが大切にされ、他の人と同じ場所で瞑想をしていても取組んでいる瞑想はそれぞれの習熟や状態によって違うものをします。また週に3回定期的に僧院のトップクラスのサヤドー(長老)との個人面談がありました。
この講座のように、自分のペースで学べて取組めて、個別にサポート指導を受けられて進める、本場のような望ましい指導はほとんどされていません。大事なことです。
しっかり経験や力量のある指導者に習う
どんなスポーツでも習い事でも、それをしっかりと熟達した人からしっかりと習って、リスクも越え、上手くいかない苦労も様々して熟達した人でなければ、きちんと人に教えることはできません。
でも、マインドフルネス瞑想は、誰でもすぐに教えられるもののように考えられ教えられて習われている傾向があります。
瞑想は、きちんと取組んでいくと人それぞれ様々な状態になります。上手くいかない時もきたり、リスクが現れてきたり、それは人それぞれ、さらに時と場合によって違います。それに適切な対処の指導がなされなければ、正しい習得はできませんし、危険でもあります。
私が修行したミャンマーの僧院は何十人も僧がいて長老も何人かいましたが、瞑想の指導はトップクラスの長老が定期的な面談でしてくださって、進み具合はどうか、取組みかたは正しくできているか、改善すべき点、発展すべき点等々を随時指導してくださり、心身の状態も気にかけ対処できるようにしてくださいました。
瞑想以外のことも含めた適切な総合的な取組みをする
そして、瞑想は瞑想だけではなくて、瞑想を含めて総合的にどのように取組むかが大事です。それによって効果が出ないこともあります。効果の質と大きさは違ってきます。
上記のトロント大学研究員のラクシュミ・マゴン氏の報告をもう一度、掲載します(ニューズウィーク日本版2020年4月24日より引用)。
マインドフルネスは、自らの置かれた状況について見方を変えるよう教える。でも状況そのものが変わらなければ、マインドフルネスを実践しても効果は限られている。
苦しみの根本原因が解決されない限り、いくらマインドフルネスを精力的に実践しても、抑鬱や不安にさいなまれるリスクが残る。
つまり、瞑想に取組むだけでなくて、苦しみの根本原因を解決する取組みも必要ということです。
また、上記で紹介したブーリン準教授の報告を再掲すると次のようにあります。(ニューズウィーク日本版2021年8月19日より引用)
マインドフルネスは実践者をより良い人間に、より寛大で親切な人間にすると多くの人が考えているが、より利己的になる人もいる。
比較的相互依存的な被験者でマインドフルネス瞑想をした人は、17%がより寛大になった。一方、比較的個人主義的な被験者で、マインドフルネス瞑想をした人は他人のために時間を費やすことに15%がより消極的になった。
つまり、より良い人間、寛大で親切な人間になるには、瞑想に取組むだけでなくて、日頃に相互依存的、人に優しく親切な人間となるように取組む必要もあるのです。
プーリン准教授はこの報告と同じ中で、近年の西洋系のマインドフルネス瞑想の問題点を次のように書いていました。(ニューズウィーク日本版2021年8月19日より引用)
アメリカのマインドフルネスブームは、いわば根無し草。マインドフルネスのルーツは仏教にあるが、アメリカではもっぱら世俗的な文脈でその効用が語られている。
近年の西洋系のマインドフルネス瞑想は、医療・心理療法のため、ビジネスのため等で、対処的・限定的な効用のための取組みの傾向があります。瞑想のやり方もそういう傾向のものになっていて、瞑想と組み合わせてすることもそうなっている傾向があります。
一方、本来のマインドフルネスの正しい習得ではそうではなく、人として本質的な在り方、人格的な向上のために、日常における全般的な心がけや言動、在り方なども含めた総合的な取組みをします。。
八正道で取組み習得する
本来のマインドフルネスの瞑想のヴィパッサナー瞑想の正念、サマタ瞑想の正定は、苦しみから解放されて福楽に生きられるようになるノウハウの八正道のセットのもので、八正道の文脈で取組むのが適切です。
八正道には、日頃に人に優しく親切な人間となることなど、日常で苦しみの原因を除いていく取組みも入っています。本来のマインドフルネスに関する理論・教理を学び智慧とすることも含まれています。
この講座は、八正道も学べて取組める適切な総合的な文脈の取組みになっています。
まとめ
以上、瞑想の適切な取組み方・文脈は次の6点です。
- 危険性が小さく効果のしっかりある瞑想の方法に取組む
- きちんと瞑想の段階をふんで力をつける
- リスク管理をきちんとする
- 個人ごとに進み個人別のサポートもある指導
- しっかり経験や力量のある指導者に習う
- 瞑想以外のことも含めた適切な文脈の総合的な取組みをする。八正道で取組む
この講座は、全て大丈夫です。