このシリーズ第5回の記事では、五戒(ごかい)を取り上げます。
前回の第4回の記事で、レイキの回路が開く『伝授』についてお話しました。五戒は、最初の段階の伝授の後、セルフヒーリングと共に実践を始めます。
五戒は、レイキを活かしていく道の根幹にある教え・実践です。
1|五戒は、レイキメソッドの重要な実践
「今日だけは、怒るな、心配すな、感謝して、業を励め、人に親切に」。この短い言葉の中に、レイキメソッド(方法・手法)の哲学と実践の核心が凝縮されています。
単なる規範ではなく、レイキが目指す実現のための実践項目
五戒は、単なる道徳や信条ではありません。レイキメソッドが目指す「安心立命(あんしんりつめい)」という境地に近づくための重要な実践項目です。日々の在り方を整え、心を清く保つための具体的な指針として位置づけられています。
レイキを活かす道を生きる人にとって、五戒は「こうあるべき」という外側からの規範ではなく、「このように生きると心が整う」という内側からの働きです。五戒を実践すると、心は静かさと透明さを増し、レイキ=宇宙生命エネルギーがいっそう働くようになります。
こうした意味で、五戒はレイキを活かしていく人が歩む道そのもので、レイキの本質を現実生活の中で育てていくための重要な実践です。五戒を大切にすることで、レイキと共に生きる道が根づき、日々の心の在り方が磨かれていきます。
五戒の実践で、心・心のエネルギー状態を整え清く高める
五戒を実践して日常の在り方を整えると、心と心のエネルギー状態は清く高まってきます。怒りや不安に振り回されず、落ち着いた視点で物事を見られるようになり、心は澄んだ状態へと向かいます。
心が整うと、思考の雑音や感情の波に飲まれることが少なくなり、意識が『今この瞬間』に戻ってきます。すると、エネルギーの流れも乱れにくくなり、心の波動は安定し、明るく軽やかな方向に向かい始めます。
このように心が整っている状態こそが、レイキを活かしていくための土台です。五戒は、心を清め高める日常実践であり、レイキの働きを深く引き出すための内面的な準備にもなります。
手当て法としてのレイキ実践もより効果的に
心が整い、心のエネルギー状態が清く高まると、手当て法としてのレイキ実践においてもエネルギーの流れは円滑になります。気持ちが乱れているときよりも、心が落ち着いているときのほうがレイキは深く働きます。
五戒を実践して心の状態が安定していると、手当て法を行う際の集中や感受性も高まり、手から伝わるエネルギーの質も変わってきます。整った心で触れるレイキは、相手にも穏やかで優しい働きをもたらします。
五戒の実践によって心が清く高まり整うことで、レイキの手当て法の効果も大きく高まります。日常の心を整えることが、レイキの力を最大限に活かす基盤となるのです。
2|安心立命への道 ― 五戒の起源
五戒は、単なる実践項目ではなく、その背景に深い哲学があります。
臼井甕男(うすいみかお)先生が、レイキメソッド(方法・手法)を体系化する際に影響を受けた仏教の教え、そして自身の修行経験。これらを理解すると、五戒が「安心立命へ至る道」として位置づけられる理由が明確になります。
レイキメソッドの道は、仏教の『八正道』と響き合う
臼井先生は、霊気療法を生み出す以前に、禅寺で三年間の修行を積んだと伝えられています。仏教には、悟りへ向かうための実践体系として『八正道(はっしょうどう)』があり、これは「戒・定・慧(かいじょうえ)」という三学(さんがく)から成り立っています。
- 戒の項目:正語(しょうご)、正業(しょうぎょう)、正命(しょうめい)
- 定の項目:正精進(しょうしょうじん)、正念(しょうねん)、正定(しょうじょう)
- 慧の項目:正見(しょうけん)、正思惟(しょうしゅい)

レイキの五戒はこの「戒」の精神と通じており、レイキメソッドの実践の道は、仏教の八正道の三学(戒・定・慧)に通ずるものがあります。
私は禅宗や上座部仏教の修行を通して、この三学の道を実践してきました。戒で日常生活の在り方を整え、心を整え、その整った心で定(瞑想や意識の鍛錬)の実践を行い、そこから悟りの慧(智慧)、大安心が会得されるようになってきます。
レイキメソッドの道は、安心立命にいたる道
レイキメソッドの道も同じく、五戒の実践で日常の在り方を整えることで、心が整い清く、波動が高まり、その心でメソッドの手当て法を実践することで、さらに整い清く高まり、「安心立命(あんしんりつめい)」に至ります。
安心立命とは、どんな困難な状況にあっても、心を安らかに保ち、惑わされずに本来の自分でいられる境地です。五戒の実践は、この境地へ至るための土台であり、レイキメソッドを実践する人の心の修養のための実践です。
3|五戒の内容とそれぞれの理解
五戒は、一つひとつが独立した教えではなく、日常生活の中で心の在り方を総合的に整える構造を持っています。
【レイキメソッドの五戒】
今日だけは
怒るな
心配すな
感謝して
業を励め
人に親切に
「今日だけは」― 一歩一歩
私たちは、守ろうと思っていても、つい守れない弱さがあります。「またできなかった、してしまった」と、その弱さに悩んでしまいこともあります。
「今日だけは」という言葉は、その悩みに暮れることを優しく許し、心を今日という日に戻してくれて、前進させてくれます。「一歩一歩、着実に」です。大きな変化も、一歩一歩を積み重ねることで現れてきます。
「怒るな」― 感情の扱い
特に怒りについて戒があるのは、怒りの感情が湧くこと自然なことですが、その扱いによっては、心は低い波動になり、苦悩のもとにもっともなることだからです。
私の教えている統合型レイキ(インテグラル・レイキ)では、感情のコントロール法を具体的にお教えしていますが、感情への対処のしかたによって、心、心のエネルギー状態が変わり、適切な対処をすることが、心を整え清らかにし、よきレイキが流れるようにもなります。
「心配すな」― 心を今に戻す
将来の不安や心配に、今を過ごしてしまうことはありませんか。
「心配すな」とは、何も気にするなではなく、「今この瞬間に戻る」という意味です。今この瞬間に意識を向け、今この瞬間に、心をつくして心のエネルギーを向けるようにして、より良い在り方をして生きるようにします。
統合型レイキ(インテグラル・レイキ)の伝授では、心配する気持ちが起きてきたときの具体的な対処法をお教えしますが、「今」に心のエネルギーを尽くしして暮らすことが、人生を改善していきます。
「感謝して」― 有難さへの気づき
不足を思うと、心のエネルギーは乱れ、不安や不調も招きます。良い引き寄せも起きなくなります。感謝はその逆。「足りている」「すでに与えられている」と気づき感謝すると、心は明るく澄み、高い波動のエネルギー状態へ整います。
科学的にも、感謝の感情は副交感神経を優位にし、免疫機能や回復力を整えることが知られています。感謝とは、心を調和へと導く自然の仕組みでもあります。
統合型レイキ(インテグラル・レイキ)の伝授では、感謝の実践が具体的にできる方法をお教えしますが、「感謝」は人生の好転の鍵です。
「業を励め」― 誠実な在り方
「業を励(はげ)め」とは、日々の営みを誠実に行うことです。日常の小さな行いを大切に積み重ねることで、心は清く穏やかに整っていきます。
統合型レイキ(インテグラル・レイキ)の伝授では、そうできるようになれる具体的な方法をお教えしますが、誠実な行為の積み重ねは、心に静けさと明るさをもたらします。心が整うと、行いにも自然と温かさが生まれ、日常の質が高まっていきます。
レイキメソッドで活性化するレイキ=宇宙生命エネルギーも、自然にある当たり前のエネルギーを活かします。レイキを活かしていく道は、けして奇抜なことではなく、当り前の日々のことを大切に善く生きる人になることです。
「人に親切に」― 慈悲の実践と心
「情けは人のためならず」という言葉がありますが、それは人に親切にすることは、人のためにだけでなく、自分のためになるという意味です。
人に親切にすることは、心のエネルギー状態を清く高めます。そして、私たちはエネルギーの場でつながっています。親切によって相手のエネルギーがプラスに高まると、エネルギー場でつながっている自分にその高まりが還ってきます。
統合型レイキ(インテグラル・レイキ)の伝授では、人に親切をできる具体的な指針をお教えしています。
4|結び:五戒と手当て法は、レイキメソッドの両輪
レイキメソッドの五戒の実践は、手当て法の実践と共に大切です。ただ言葉として唱えるばかりでなく、日常の暮らしのなかで実際に実践することにこそ意味があります。
五戒は、レイキを活かす道を生きる人たちの日々の目指す姿です。日々の在り方が乱れていると、心と心のエネルギー状態も乱れ、レイキメソッドを学んだ意味が薄れてしまいます。
五戒の実践で、日々の在り方を整えていると、心・心のエネルギー状態は整い清く高まっていきます。すると、手当て法としてのレイキの実践でもエネルギーの流れが円滑になり効果的になります。そうして、レイキメソッドの目指す安心立命が着実に実現されるようになります。
5|統合型レイキのインテグラ・レイキの場合
私が実践しお伝えしているインテグラ・レイキでは、五戒を「在り方の理想」としてかかげるだけではなく、日常の中で実際に使える形で身につけられるよう指導しています。
五戒を生活の中で生かすためのアプローチは、レイキを深める大切な要素です。ですから、五戒を、日常の中で実際に実践できるようになっていただくことを重視しています。
私の心理カウンセラー、コーチ、禅宗・上座部仏教での修行経験などをもとに、「怒るな」「心配すな」「感謝して」「業を励め」「人に親切に」のそれぞれの戒を、そうしようという思いだけでなく、実際にできるようになる具体的な方法やワーク、指針を指導しています。
次回は―「第6回|手のひらで整う体・心・人生― レイキのセルフヒーリング」 日々の生活の中で、レイキをどのように活かし、自分を整える実践へと深めていくのかを解説します。


