レイキのメソッド(方法・手法)は今、「西洋レイキ」「現代レイキ」「カルナレイキ」「セイキムレイキ」など、世界中で多様な形を持っています。
この記事では、普及と主な流派を俯瞰し、レイキのメソッドのがどのように広がり、それぞれどのような特徴があり、どのように共通に結ばれているのかを見ていきます。
そして最後に、私の実践する「統合型レイキのインテグラル・レイキ」が、その多様性の中でどのように橋をかけているのかを紹介します。
1|レイキの系譜 ― 枝分かれしていく流れ
第2回の記事で臼井甕男(うすいみかお)先生によって始まった霊気療法=レイキのメソッドの誕生と、その後の普及について触れましたが、ここでは、重要な点も含めて、さらに詳しく見ていきましょう。
臼井霊気療法(日本伝統)の創始
臼井甕男(うすいみかお)先生が1922年に創始した「臼井霊気療法」は、単なる治療法ではなく、心身を調え、人格を磨き、人生を調和させる『修養の道』として体系化されました。
その中心にあるのが「五戒(ごかい)」です。五戒は、日々の在り方を通じて、生命の流れ(気)と整える実践指針で、霊気療法を単なる手当て法ではなく、精神的修養として深める土台となりました。

臼井先生は、「安心立命」すなわち、どんな状況の中でも安らかで揺るがぬ心を得ることを目指していました。その教えは、病を癒すことだけでなく、「生き方を整える」ことに重きが置かれており、霊気療法=レイキのメソッドの根底に今も息づいています。
この原点が、のちにさまざまな流派に分かれていくすべての流れの基礎となり、レイキのメソッド(方法・手法)の普遍性を形づくりました。
林忠次郎~高田ハワヨ(西洋への伝播)
臼井甕男先生が創設した臼井霊気療法学会の教えを受け継いだ林忠次郎は、のちに自身の「林霊気研究会」を立ち上げ、レイキを広めていきました。
彼は臼井氏からレイキを学び、東京でレイキクリニックを開き、常時16人のレイキヒーラーでヒーリングにあたっていたと言われています。

彼のクニックで治療を受けた人の中に、難病のため余命幾ばくもないと医師から言われていましたが、8ヶ月間のヒーリングの後、完治した人がいました。それが、ハワイ生まれの日系二世の高田ハワヨでした。
彼女は林忠次郎から指導を受けて、自らも霊気療法をマスターし、ハワイでレイキクリニックを開き、多くの人を癒しました。そして、亡くなる少し前からアチューンメント・伝授も行い、80歳で亡くなるまで、22人のレイキティーチャーを育成しました。

高田ハワヨは、当時の西洋社会にも受け入れられるように、段階的な伝授制度やシンボル・マントラを体系化しました。これにより、霊気療法=レイキのメソッドは、習得がしすく実践しやすい形として世界中に広まっていきます。
高田ハワヨによって、霊気療法=レイキのメソッドは「ヒーリング体系」へと発展し、現代に続く『西洋レイキ』の基盤が築かれました。臼井の精神性と西洋の実践性が出会うことで、グローバルな生命理解の道へとなったのです。
その後、20年間ほどのうちにレイキは欧米諸国にて飛躍的に広まり、現在では世界におけるレイキのメソッドの実践者は800万人以上にのぼると言われています。
1980年以降の日本への再輸入と多様化
1980年代に入り、多くの日本人実践者が西洋で学んだレイキメソッドを持ち帰り、臼井霊気療法の原点と融合させながら、新しい形を模索しました。
こうして土居裕による「現代レイキ」をはじめとする新しい潮流が生まれます。現代レイキは、西洋レイキの効果的なヒーリング体系と、臼井霊気療法の精神性向上の理念の調和的なレイキメソッドとして発展しました。

さらに、欧米ではカルナレイキやセイキムレイキなど、心理的・スピリチュアルな成長を重視する流派が次々と誕生します。
それぞれの流派は、文化や時代の文脈の中で、異なる角度から『いのちの光の流れ』を理解しようと試みてきました。
このような多様化は、レイキメソッドが生命そのものの力を映し出している証です。枝分かれしながらも、どの流派も同じ光の中心に向かっている ─ それが、レイキの道の普遍性です。
2|レイキメソッドの主要な流派の特徴と方向性
霊気療法=レイキのメソッド(方法・手法)は、文化や時代の影響を受けながら、いくつかの流派へと枝分かれしました。それぞれ独自の特徴と価値があり、異なる角度からレイキの本質に近づこうとしています。
ここでは、代表的な4つの流派を通して、それぞれがどのような理念と方向性を持っているのかを見ていきましょう。
臼井霊気療法 ― 精神修養としてのレイキ
臼井霊気療法は、レイキメソッドの原点にある日本の伝統的な教えです。その目的は、病を癒すことにとどまらず、心と体、そして人生そのものを「自然の調和」に戻すことにあります。
五戒も日々実践することで、生命の流れ(気)が整い、人格の成熟とともに霊性が育まれていきます。この流派では、「気を整える」ことは「心を整える」ことと同義です。
手当て法による癒しは、結果として自然に現れるものであり、目的ではなくプロセスの一部とされています。そのため、レイキメソッドを生き方の修養としてとらえることが特徴です。
西洋レイキ ― 実践性と体系化の道
西洋レイキは、ハワイの高田ハワヨによって体系化され、アメリカを中心に世界へ広まりました。その特徴は、段階的なアチューメント(伝授)とシンボル・マントラを通じて、誰でも習得できる再現性の高い実践法に整えられた点にあります。
その体系は、現代人が理解しやすい構造と手順を重視していて、ヒーリング技法としての普及を大きく後押ししました。「癒しの力を授かる」のではなく、「内なる自然の力を思い出す」ことを目的とし、手当て法の中で心身が整うプロセスを可視化しています。
西洋レイキによって、レイキメソッド(方法・手法)がわかりやすく使いやすい方法として伝わる道が開かれ、レイキメソッドは国境を越えて多くの人々に届くようになりました。
現代レイキ(日本)― 西洋と東洋をつなぐ調和型
現代レイキは、臼井霊気療法の精神性と西洋レイキの実践体系を融合させた、日本発の新しいレイキです。再輸入によって逆に日本へ戻ってきたレイキを再統合し、「癒し」と「霊性の成長」を両立させる方向性を持っています。
この系統では、手当てによる癒しを通して心の在り方を学び、五戒や瞑想などを組み合わせながら、より深い意識の変容を目指します。西洋の合理的な構造と、東洋の静的な精神修養を結び合わせることで、レイキメソッドを「生きるための実践哲学」として再定義しています。
カルナレイキ/セイキムレイキ ― 高次意識への探求
カルナレイキやセイキムレイキは、欧米で生まれた派生系であり、西洋レイキの実践をさらに発展させたものです。それぞれが心理的癒しや魂の成長を目的とし、「カルマの解放」「内なる声とのつながり」「光との一体感」などをテーマにしています。
これらの流派では、シンボルやエネルギー構造がより多層的に扱われ、人間の意識進化をサポートする方向性が強く打ち出されています。一人ひとりの内面に潜む『光の力』を呼び覚ますことを通して、癒しの領域を個人から宇宙的意識へと拡張しようとしています。
統合型レイキ - Integral Reikiのメソッドの進化
そして、私が実践している『インテグラル・レイキ』は、西洋レイキの体系的な技法と現代レイキの精神修養を統合、さらに発展させた新しい統合的なレイキメソッドです。心・身体・意識のすべてを整え癒し高め、より深い「変容」「霊性の開発」へ導くことを目的としています。
レイキの基本的な手当てやシンボルの活用に加え、心理カウンセリングのメソッド、禅や瞑想修行でつちかわれたメソッド、さらにはエネルギーワークの体系なども融合しています。
その結果、エネルギーの流れとともに、現実を生きることと、思考・感情・潜在意識の層までが整えられ高まり、癒しと変容のプロセスがより深く、効果的に働くよう設計されています。
この道を歩むことで、人は自己の本質とつながり、人生そのものが霊性の実践へと変わっていき、高次元の喜び・豊かさをかなえられるようにもなっていきます。
3|共通する本質 ― 癒し、そして「調和と変容」
自然が一つの源から多様な花を咲かせるように、レイキメソッドも時代や文化などによって形を変えながら、その本質を伝え続けてきています。
どの流派にも、その奥には同じ光が流れています。名前や手法が違っても、人がレイキに触れるときに感じる安堵・静けさ・温かさは共通しています。ここでは、その共通する本質を、体験と意識の変化という二つの側面から見つめていきます。
共通する体験 ― 安堵、静けさ、光、感謝、ワンネス
レイキのメソッドを実践する人々、メソッドの手当て法を受ける人がまず体験する可能性があるのは、安堵と静けさです。手を当てると、身体が温まり、呼吸が整い、心の緊張がゆるんでいきます。その穏やかな感覚は、内なる自然が回復していくような感覚です。
やがて、そうして、身体と心が整い癒されていき、光を感じる人、見る人もいます。それは、特別な幻ではなく、生命そのものが本来持っている『いのちの響き』のサインです。

そして、レイキがもたらす体験の核心には、感謝の念があります。「生かされている」という感覚が自然に生まれ、自己と他者、自然と世界への信頼が回復します。
自分が孤立した存在ではなく、より大きな流れの一部であることを思い出すようになってきます。そのとき、人は『ワンネス』―すべてがつながっているという意識を取り戻します。
癒しの先にある意識の変容
レイキのメソッド(方法・手法)は単に心身を癒すだけのものではありません。癒しの過程を通して、私たちは『生きる意識』そのものが変わっていくことを体験します。それは、内面が穏やかになるほど、外の世界もまた優しく見えてくるような変化です。
この変容は、意図的に起こすものではなく、自然に訪れる『気づき』の結果です。手を当てているうちに、「本来のあるがままを受け入れる」心が育っていきます。そこには、ゆだねることの力が働いています。
やがて、癒しの目的が「治すこと」から「調和して生きること」へと変わります。それは、外の何かを変えるのではなく、自らの内にある光を見出すという方向転換です。この内なる変化こそが、レイキのメソッドのすべての流派が共有している本質、『調和と変容』です。
4|レイキの流派の違いの意味 ― 文化が表現を変える
レイキのメソッドの多様な流派には、単なる技法の違いだけでなく、文化や世界観の差があります。しかし、その違いは対立ではなありません。この章では、東西の文化的背景が、どうレイキの表現を形づくってきたのかを見ていきましょう。
日本的レイキ「無為自然」、西洋的レイキ「意図的創造」
日本的なレイキは、古来の「無為自然」という思想に根ざしています。自然に逆らわず、流れに身をゆだねることを尊び、「整える」とは本来のあるがままに還ることを意味します。
この姿勢は、臼井霊気療法の「ただ今日だけは」という五戒にも流れ、日常の中で静けさと調和を生きる智慧となりました。
一方、西洋のレイキは「意図的創造」という発想に親しみがあります。意識を集中し、目的を明確にすることで現実を動かすという、能動的・創造的な精神が重んじられます。シンボルやマントラを用いて意識を整えるのは、その文化的表現の一つです。
この二つの方向性は、どちらが優れているというものではありません。自然にゆだねる静けさと、意識をもって創造する積極性。それぞれが、同じ『生命の流れ』を異なる側面から照らしているのです。
文化は異なっても、エネルギーの構造は同じ
東洋と西洋で、言葉や方法が違っても、エネルギーの本質は変わりません。どの文化でも、人が安らぎ、調和し、いのちの流れを感じるとき、そこには同じ原理が働いています。それは「生命が自らを整える力」、すなわち宇宙エネルギー、宇宙生命エネルギーの表現です。
日本では「気」と呼ばれ、西洋では「ライフフォース」や「スピリチュアル・エナジー」と呼ばれます。名称は異なっても、いずれも『いのちの根源的な流れ』を指しており、体験としては共通しています。文化が違えば言葉も異なりますが、指し示す実相は一つなのです。
その意味で、流派や文化の違いは、レイキメソッドの分裂ではなく、生命の多様な翻訳です。どの表現にも、その土地の歴史や心の知恵が息づいており、それらが重なり合って人類の霊性の地図を形づくっています。
5|結び:多様性の中のIntegral Reikiという方向性
レイキのメソッドは、臼井甕男先生の時代から百年を超え、世界中で多様な姿へと広がりました。違いは、目的の分裂ではなく表現の豊かさです。人々はそれぞれの文脈の中で同じ『いのちの流れ』を体験しています。多様性とは、生命が自らを映す鏡のようなものなのです。
その中で生まれた統合型レイキ の インテグラル・レイキは、東西の叡智を橋渡しする実践です。西洋レイキの体系的な学びと現代レイキの精神修養、心理学・禅や瞑想・エネルギーワークなどを結び合わせ、癒し・調和・変容をより深く、意識の進化として実現します。

この統合的なレイキの視点から見れば、すべての流派は互いに補い合う光の断片です。それぞれの流派に敬意を払いながら、その中心にある『共通の真理』を生きること。そこに、霊気療法が本来目指していた「心の平安と霊性の成熟」という道が再び輝き始めます。
レイキの多様な枝は、すべて同じ根につながっています。その根は、「生命そのものが光である」という理解です。そして、その光を思い出す旅こそが、インテグラル・レイキの歩む道 ― 時代と文化を越えて、私たちが一つの光へ還っていく道です。
次回は-「第4回|レイキの回路が開く ― 伝授(アチューンメント)とは」 「力を授かる」ではなく、「本来の流れを思い出す」。レイキメソッドの伝授の真の意味と、意識の再同調について解説します。


